日本財団 図書館


5. 本特別委員会は、平成8年度に「流通性書類」の検討作業に着手した。今日の貿易取引の諸手続における書類の役割が極めて重要であることは、ここに改めて述べるまでもない。これらの書類の中には、手続や事務処理に必要なデータを記載するものもあるが、一部の書類は、単にデータを記載するだけでなく、物品や価額に関する権利を象徴し、このような権利の譲渡に使用されている。将来の国際電子商取引(International Electronic Commerce)においては、現行の貿易取引メカニズムがそのままの形で引き継がれることはないと思われるが、物品引渡および代金支払に関連して、何らかの形で電子式流通性書類(Electronic Negotiable Document)が必要になるものと考えられる。そこで、本特別委員会は、流通性書類のEDI化に係わる問題解決への具体的な検討取組みを進める糸口を捉えるために、まず国連ECE/WP.4その他の機関において進められている各種プロジェクトをフォローすることにした。今年度は、ヨーロッパを中心として進められているBOLERO計画その他のプロジェクトに関する情報を収集するとともに、MANDATEプロジェクトの最終報告書を検討した。これらの調査・研究については、「流通性書類に関する調査・研究[I]」として、本報告書《第2編・流通性書類関係》に収録した。

 

6. 国連ECE/WP.4は、1996年9月開催の第44回会議において丸3年の歳月をかけて検討してきたリエンジニアリング計画を承認し、1960年創設以来36年にわたる活動に一応の幕を下ろした。これまでと同様に国連ECEの組織下に留まるが、名称を1997年3月から「行政、商業、運輸のための手続および実務簡易化センター」(Centre for Facilitation of Procedures and Practice for Administration、Commerce and Transport;CEFACT)と改め、新しい拡大組織の下に国際電子商取引へ移行するための諸問題解明に取り組むことになる。しかし、1999年9月までは、これまでのWP.4の活動計画の一部が継続して進められるとのことである。

 

7. 今日、EDIを巡る世界の諸情勢は国際電子商取引の実施に向かって急速に展開しており、わが国としても、国連ECE/CEFACTを中心にグローバルな形で進められようとしている流通性書類問題への検討・取組みに積極的に参画し、来るべき21世紀の電子決済社会への円滑な対応ができるよう法制度の検討や、新しい貿易取引環境の整備等所要の対策を講じておく必要があると考える。

 

8. 終わりに臨み、日常業務に忙殺されているにもかかわらず、EDI制度手続簡易化特別委員会の委員、オブザーバー及び事務局の関係各位の献身的協力のお陰で、年次報告書を纏めることができたことを特記し、ここに改めて心から感謝申し上げる次第である。

 

平成9年3月

 

(財)日本貿易関係手続簡易化協会
EDI制度手続簡易化特別委員会
委員長 朝岡良平

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION